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八尾市ものづくりnet.の中の環境コンテンツ企業一覧の中の葵スプリング株式会社

環境分野でがんばるものづくり企業

原因に対して根本的な解決を図ること、経営者が熱意をもって取り組むことが大事です。/常務取締役 青戸 宣暁 http://www.tanakapt.co.jp

INTRODUCTION
 「葵スプリング株式会社」(八尾市太田)はバネ製造一筋で59年の歴史を持ち、豊富な実績と技術力を武器に自動車、船舶機、家電、医療器具など、あらゆる分野でメーカーのものづくりを支えている。また、廃棄物の削減を軸とした環境に優しい経営に注力し、2013年には八尾商工会議所環境改善優良事業所表彰で「優秀賞」として表彰されるなど、その取り組みが高く評価されている。
 今回は同社の環境負荷低減に対する考え方や取り組みについて、青戸常務から詳しい話をうかがった。
環境に優しいものづくり ~投入資源の最適化と品質ロスの削減

 2005年に環境マネジメントシステムISO14001を取得して以来、環境負荷低減に向けた取り組みを模索してきたが思うような成果が得られず、限界を感じていた。そこで2006年頃からシックスシグマや5S活動、QCサークルなどの活動を本格的に開始し、無駄な材料使用を削減することが環境負荷逓減に繋がるとの考えのもと、「投入資源の最適化」、「品質ロスコスト削減」の2つを重点課題として環境問題に取り組んできた。

投入資源の最適化~設計段階からこだわる!
 2006年以降、設計段階からお客様と一体になって材料使用量の適正化や削減を行うことを重点テーマとして取り組んできた。お客様の要望する品質に応えるのは当然だが、一個の製品を作るのに10gの材料を使用するところを、9gで製造が可能なように設計すれば1gの材料削減となり、そのコスト低減がお客様のメリットとなる。この考えのもと、当社では営業マン全員が「投入資源の最適化」を意識した設計提案ができるよう教育を積み重ね、浸透を図ってきた。この結果、2013年にはパナソニック㈱からeco-vc活動(環境負荷低減のVA提案活動)が評価されて優秀賞を受賞し、同社のエクセレントパートナーにも認定されるなど、受注面でもプラスの効果を生み出している。
自動化の推進~原因に対して根本的な解決を
 「投入資源の最適化」だけでなく、品質ロスの削減にも取り組んできた。異品種や不良品混入等の品質不良が発生した場合、たとえ十万個に一個の不良であっても、作り直しや廃棄となってコスト増加に直結する。そのため、コンサルタントを導入しながら一つ一つの不良原因を分析し、ヒューマンエラーによる不良が起きないよう製造、搬送、品質検査などの各工程において徹底的な自動化を進めてきた。
 具体的には、高い加工精度で線ばねを製造する最先端のコイリングマシンやスプリングフォーミングマシンを導入して品質向上に努めた他、一定のロットを生産すると製品の入ったボックスがコンベアで自動搬送される仕組みを自社で構築した結果、従業員が1台の機械に拘束されることなく、少人数でも同時に数十台の機械を管理することが可能となった。さらに、極めて重要な品質検査には、最新の自動測定器を導入することで、これまで20~30分かかっていた検査工程を僅か数十秒で可能とし、さらに検査精度も向上させるなど、不良品を見逃さない検査体制を実現。加えて、人が関わる工程では、第三者による作業チェックを取り入れたり品物を色で分けたりするなど、人為ミスを防ぐ仕掛け作りも行った。
 こうした地道な取り組みの結果、品質不良による廃棄コストが徐々に減少し、2013年には廃棄ロスコストの88%削減(2006年比)を達成した。これも、全てが順調に進んだ訳ではない。グラフが示すように、ロスが減らず、壁にぶち当たった時期もある。
 「大事なのは、大小を問わず一つ一つのミスや品質不良に対して真摯に向き合い、原因に対して根本的な解決を図っていくこと。そして困難な時こそ、経営者が熱意をもって品質改善、環境負荷低減に取り組むこと。」と青戸常務は話す。

廃棄ロスコスト削減のグラフ

 辛い局面もあったが、諦めずに熱意をもって原因分析と作業工程の見直し、品質検査の強化を地道に進め、従業員一丸となって取り組んだ結果が今に繋がっている。
社内での取り組み~従業員の意識を高める
 地道な品質改善や廃棄ロスコスト削減には、社員の高い意識が欠かせない。そこで当社では、不良の発生状況や原因を詳しく分析し、廃棄ロスコストの状況をまとめた「品質・環境報告書」を毎月作成し、社内で回覧を行うことで問題の共有化を図っている。これは、一つの不良やミスが生み出した廃棄ロスの数量及び金額などの数値データを開示することで従業員の意識や責任感を高めるとともに、その原因を全員に理解して貰うことで同様の事例の防止に繋がっている。
 また、こうした会社側からの仕掛けだけでなく、従業員が自ら総意・工夫して考えるべく、歩留・品質の向上、廃棄物や光熱費削減、合理化に繋がるあらゆる提案について、全従業員から「改善活動報告書」を受け付けている。この報告書により、従業員は改善策の実施前と実施後を比較して廃棄ロスをどれだけ削減したかの効果測定を行い、当社ではその効果の度合いに応じて従業員に対して報奨金を支給している。こうして、会社側からの強制ではなく、従業員の自主性を尊重することで、従業員それぞれが日頃から品質改善、廃棄ロスコスト削減に向けた問題意識を持ち、改善策まで考える意識が浸透している。
  • 自主改善活動

  • 改善活動報告書

EPILOGUE

 取材後に事務所と工場を見学したが、整理整頓が行き届いており、日頃の取り組みの一端を垣間見ることができた。また、社内のあちこちに従業員の改善提案が掲示されており、改善効果の大小を問わず、従業員の提案を尊重し受け入れる柔軟な社風を感じた。今後も更なる環境負荷低減に向けて、「投入資源の最適化」や、自動化や生産工程の見直しを中心とした「廃棄ロスコスト削減」を強化していく意向であり、その熱意は衰えることがない。
 しかし、環境への貢献はこれだけではない。当社の主力製品である「バネ」も私たちの目に見えない部分で環境負荷低減において大きな役割を果たしている。お客様から求められる加工精度やニーズをクリアしていくうちに、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池などの2次電池部品や太陽光関連の金具など、自然と環境・省エネルギーに関連した仕事が集まるようになったという。現在、受注の半分程度を同分野が占めているが、今後はそれを更に強化する方針であり、環境に優しい企業として更なる躍進が期待されよう。

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