八尾市ものづくりnet.八尾を拠点に頑張るものづくり企業株式会社アーテック
取材日:2010年8月11日
幼稚園や小・中学校、高校等の学習教材及び画材・文具製造販売業者として、昭和35年に創業した株式会社アーテックは、今や学校教材のトップメーカーとして今年で創立50周年を迎える。
同社は、宇野泰正氏が代表に就任以降、需要が見込める分野に注目。理科教材・科学工作、運動会用品を提供するなど“知識から体験へ”と大きく変化する教育現場に新分野を確立しながら、着実にその業容拡大を果たしてきている。
宇野代表は、「当社の最大の強みは情報力」と力強く語る。企画室にある専用コンピュータを駆使し、全国にある約3,000社の代理店網から吸い上げられた顧客ニーズを最大限に活かし、商品の企画開発からカタログ制作まで安価でスピーディに行っている。
代表取締役社長 宇野 泰正さん
“教育現場からの要望・希望を如何に反映できるか”、営業マンが全国の学校などから収集した情報は、同社の新たな商品開発の鍵を握る。
通常、メーカーでは商品開発・製作は行っても、商品カタログまで自社では制作せず、外部の広告会社などを使用して制作するケースが多くみられるが、同社の場合は、教育現場に常に価値ある教材を提供し続けていくために、学校毎にそれぞれの要望に応じた個別のカタログ制作にも取り組むなど自社内でカタログ制作まで対応することにより、必要な情報をよりスピーディに顧客に提示することを可能としている。
同社の特長は、“オーダーメイド企画”と“直貿易”にある。「こだわりはオリジナリティ。売上の90%以上は自社オリジナル商品だ。だからこそ、他社との差別化が図られ、自ら市場を作ることが出来る」と、宇野代表は篤く語る。商社を使わず中国にある約300社の協力工場から直接調達を行うことで、少量多品種にも関わらず低価格での提供が可能となっている。
平成6年に八尾市に物流センターを開設。平成9年には、大阪市平野区から本店を移転した。
その後も、製造・販売で着実に成長を果たしてきたが、学校教材の需要が増えていくなか、社内で一刻も早く物流面での強化を図ろうという機運が高まり、これまで培った物流システムを最新式に移行できる新社屋用地を探すことになった。
新社屋用地は、大阪府内でいくつかの候補地があげられたが、建設地となった八尾市の用地は、JR久宝寺駅に隣接する約3,300平方メートルの広大な土地で、インターチェンジにも近い交通至便な地域であり、多品種な製品をトラック輸送する同社にとって、企画・物流面を一体化した施設が建設出来るという点での目標に合致した。そして何よりも、『ものづくりのまち八尾』を掲げる八尾市では、工場集積地への立地に関して、“ものづくり集積促進奨励金制度”による立地支援が受けられる点も大きかった。さらに、工場集積地への立地により、市内企業との連携等による相乗効果が見込まれるというメリットもあり、平成21年8月に物流機能を併せ持つ本社屋を新設した。
宇野代表は、「新社屋に勤務する従業員の多くは八尾市民。交通至便な地域で、豊かな人材を確保できる点からもメリットは大きい」という。雇用創出の面からも、地域に根ざす新社屋の果たす役割は大きい。
新社屋外観
企画・開発室
最新式物流システム
同社には、海外から1年間に500コンテナが到着する。これらの膨大な商品アイテムに対応するため、新社屋では、物流レーンを拡張し、最新式の物流システムにより、出荷体制が強化された。
新社屋の立地効果について、宇野代表は、「今では、1日で3,000件の受注・発送や15時までの受注は当日出荷することが可能となり、飛躍的な向上が実現した」と語った。
そのほか、物流システム以外にも受注データ管理や営業向けオリジナルカタログの作成ソフトなど、システム投資や自社制作を行う加工室の設備拡充を図り、商品企画から制作、物流機能の刷新・増強に日々注力している。
理科や数学の授業数が増加する教育改訂を背景に、同社は、理科好きの子どもを育てる「ニッポン教育おうえんだん」を提唱し、理解しやすく、かつ、安価な個人教材の提供に力を入れている。その提供範囲は、中学・高校向けなどの教材販売に止まらず、全国のホームセンターや大手量販店などにもフィールドを広げている。
宇野代表は、「安価な価格設定で、“触って覚える”個人教材を業界に先駆け開発・販売してきた。家庭でも気軽に教材に触れられる機会を作り、子どもたちの理科に対する好奇心をアップしたい」と語る。さらに、「現在、科学工作アイテムは約200種類を超え、今後も毎年約100種類の新商品を企画開発していく予定。次世代教育の橋渡しになれば」と抱負を続けた。
200種類を超える科学工作アイテム
学校教育に役立つ便利な教材