八尾市ものづくりnet.八尾を拠点に頑張るものづくり企業浪花昆布茶本舗
取材日:2010年10月18日
昭和33年に創業した有限会社浪花昆布茶本舗は、各種昆布茶の製造業者として今年で創立52周年を迎える。
同社は創業して以来、全国に数社存在する昆布茶製造業者の中でも、一貫して「昆布茶」の製造に特化した専門業者として他社にない商品分野を開拓し、専門店・飲食店など全国約800件と取引を有している。特に、25年前から取り組んでいるPBブランドのOEM業務は当社の大部分を占めている。
「創業以来、素材と安全面にはこだわり続けています」と大山代表は語る。
素材である昆布は、他産地の昆布より肉厚な真昆布を使用、出来上がりの色も非常に綺麗な色である白口浜産(北海道の道南部)の昆布のみを使用しており、梅昆布茶の梅についても、紀州産の梅しか使用していない。
また、大山代表は「コスト面だけで考えるならすぐにやめるんですが、今までやってきたことを変えるつもりはありません」と語るように、昆布茶を入れる缶容器については、消費者への安全性を考えて、開封時に手が切れない材質・加工を施したものを使用し続けている。
さらに、顧客のニーズに合わせた味付けや隠し味作りへのこだわりから、生産についても手作りに近い方式を採用しているだけでなく、大手同業他社と一線を画し、50個前後など小ロットの受注に対応している。そうすることで、「顧客のニーズに合わせた味付けや隠し味を作ることが可能」と大山代表は語る。
代表取締役社長 大山 喜隆さん
創業以来、本店のみでの運営であったが、平成22年2月に新工場を開設、生産拠点を同工場に集約することとなった。
「見える工場」をコンセプトに、生産現場が目に見えるよう工場内をガラス張りにしたことで、自由に見学してもらえるようになった。安心・安全が重要である食品業界において、顧客や取引先などが生産現場を見学に来ることが多く、新工場の建設で既存の取引先との信頼関係の維持と、新規営業時にも大きな効果を発揮している。
設備面では工場内に自前の試験室を設け、ロット毎に簡易的な水分・細菌・異物混入検査は即日で行えるようになったこと、近隣環境に配慮した特注による換気扇の導入など、安全・衛生面で抜かりはない。
大山代表は、「従業員の意識が変わってきたのはうれしいです」と語るように、誰からも見られているという点で、緊張感を持った作業への取り組みや、来客時の挨拶や顧客対応の質が向上するなどの相乗効果が見られ、そういった点でも新工場の果たす役割は大きい。
新工場の候補地の選定にあたっては様々な場所が候補にあがったが、従業員の大半が八尾市を中心とする近郊から通勤している点や、本社と同地域に所在することで情報共有が円滑に進むメリットがある点から「創業地である八尾市にこだわった」と大山代表は語る。
そんな同社ではあるが、悩みの種がないわけでない。同社の商品構成上、売り上げが年末年始に偏ってしまっている現状がある。それを改善するために、通年で対応出来る新たな商材を投入していくだけでなく、昆布茶に合う料理レシピの紹介など、昆布茶自体の魅力を伝える活動や自前の試験室を利用した試験委託サービスを視野に入れている。
例えば、近年の猛暑対策として、昆布のミネラルを生かした商品や塩分を多く含む梅昆布茶でヒット商品を生み出したいと意欲的だ。
また、商品だけでなく包装資材等までにも気を配り、お客様へのちょっとしたサービスと付加価値を併せ持った商材作りにも力を入れている。
包装資材に仕掛けを施しブックカバーとして再利用出来る“ブックカバー付き昆布茶”を書店向けに提案しているのをはじめ、箸袋になる包装資材、正月用の“おみくじ付き昆布茶”、“固形体の昆布茶”など従来の既製品にとらわれない商材も次々と投入している。
大山代表は、最後に「これからも付加価値のある商材を市場に投入していくことで、業界全体を活性化していきたい」と抱負を続けた。素材の品質と安全性にこだわり、消費者に身近に飲んで喜ばれる商品を目指して、有限会社浪花昆布茶本舗は、常に次世代を見据えた商品作りに取り組んでいる。