八尾市ものづくりnet.八尾を拠点に頑張るものづくり企業大平工業株式会社
取材日:2010年11月12日
昭和2年にデンタルケア製品の製造業者として創業した大平工業株式会社は、創業時よりハブラシ一筋で、毛の抜けないハブラシで国内のみならず海外からも注目を浴びてきた。ライオン株式会社のOEM生産や量販店向けPB商品の生産で確実に実績を残すなど、長年培ってきた技術で生み出される高品質の製品は消費者の心をつかみ続けてきた。
さらに、昭和55年には株式会社ジャックスを設立し、自社グループブランドを確立し、営業部門を強化することとした。自社ブランド名「デンタルプロ」を核とし、数多くのオーラルケア商品を手がけた。
特に、「歯間ブラシ」においては、ドイツ製歯間ブラシ自動植毛機の導入と製法特許の取得により、独自の新技術を確立し、量産化が実現された。その結果、ハブラシが1本100~150円程度に対して、1本100円前後と高額だった「歯間ブラシ」のコストダウンが可能になり、瞬く間に大ヒット商品となった。
わずか12年あまりで当時5億円だった市場規模を50億円にまで拡大させ、同社も国内トップシェアメーカーの地位を確立するに至った。
代表取締役社長 佐野 晃さん
デンタルプロ商品シリーズ
「当社を支えるのは独創的な“アイデア”と“サービス”である」と西尾則彦専務が強調するように、一見単純に見えるハブラシにも様々な仕掛けを施している。
“アイデア”の代表例として、日本発=世界初となる「年齢別歯ブラシ」の開発である。歯科大学との産学連携による数多くの歯科検診キャンペーンから生み出された子供用ハブラシは、現在では当たり前となった年齢別ハブラシの先駆けとして発売当初には大きなインパクトを与えた。
また、「デンタルプロブランド」の一つでもある「ブラックシリーズ」は、歯ブラシでは類をみない「斬新なデザイン」と「歯垢除去効果」という効能を特徴とした、業界内でも評判となった“アイデア”アイテムである。
さらに、“サービス‘の代表的なものとしては、「デンタルプロブランド」における“歯間ブラシサイズ交換サービス”が挙げられる。このサービスは生活者が商品購入後、歯間サイズが合わない場合に無料で交換する、という画期的なものであった。「特に歯間ブラシを初めて使用されるお客様にとっては安心して購入なされたと思います」と西尾専務は語るように、現在に至るまでのべ3万件以上の交換実績を残し、その際に得られたアンケート結果も当社の製品開発とファン獲得に大きな貢献を果たしてきた。
同社は、創業時より大阪府東大阪市で事業を展開してきたが、近隣の環境変化に伴い、操業環境が悪化し、事業拡張もままならない状況であった。
そこで、八尾市若林町に候補地を選定し、八尾市からの工場立地補助金である「八尾市ものづくり集積促進奨励金」を活用しながら、新本社工場・事務所を移転した。「八尾市は産業集積地が多く、自由度の高い土地を探すことができました」と西尾専務が語るように、生産規模の拡張に伴い、生産量が増加しただけでなく、従業員も新たに20名増員し、それに応えるように働きやすい職場環境の整備にも取り組んだ。また、大阪市営地下鉄八尾南駅から近く、従業員の通勤面での利便性が向上した。さらに、物流面においても幹線道路や高速道路に近く、取引先とのコミュニケーションも非常に図りやすくなった、と様々な立地メリットを挙げている。
歯ブラシの製造機械
働きやすさを意識したオフィス
成熟しつつある国内ハブラシ市場において、同社では、「10年前より「企画開発室」を設置し、若手デザイナーを登用するなど、付加価値型商品を開発し、大手メーカーとの差別化に力を入れてきた。ハブラシとしての機能性を重視した製品、デザイン性や遊び心のある製品を市場に提案している。
その一つの試みとして、「毎日使うハブラシや歯間ブラシを、アクセサリーを身につける時の様にもっと楽しく使用していただきたい」、そんな想いから”オーラル(口)”と”アクセサリー(装飾品)”を組み合わせた造語”オーラルアクセ”ブランドを立ち上げることとなった。
”ねこの肉球”を意識したハブラシ「ねこの肉球ハブラシ」やデザイン性を重視した歯間ブラシ「スキマ美人」などは、業界にとらわれない製品として各種メディアでも取り上げられている。
すでに市場展開している韓国・中国に加え、シンガポールに設置した現地法人を拠点に東南アジアなど新興国への市場開拓に力を入れている。さらに、ヨーロッパ市場を開拓していく意向があるなど、海外戦略を見据えた動きも活発化させている。
その戦略に対応すべく、世界に通用する人材の育成を目指し、従業員の80%以上は1~5年以内での英語習得を目指し、そのための環境整備にも取り組んでいく。
最後に、「仕事を通じて世の中の役に立つ」という、同社の信条をもとに、常に新しい時代の流れに対応し続ける大平工業株式会社、今後の活躍が大いに期待される企業である。
新工場外観