八尾市ものづくりnet.八尾を拠点に頑張るものづくり企業株式会社レザック
取材日:2010年12月14日
抜型製造を含む各種自動機の製造販売業者として柳本忠二氏が昭和57年に設立した株式会社レザックは、今年で29年目を迎える抜型製造システム総合メーカーである。
同社は各種抜型製造を行っている株式会社菱屋が自社用で開発したCADシステムや自動製図機を外販する目的で設立された。元々すべての工程が職人による手作業だった抜型製造工程の効率化を図るために自動化設備を独自に開発し、不良率の低減、コストの削減、短納期・多品種に対応する技術力を身に付けた。株式会社菱屋の時代から培ってきたノウハウを生かして製造装置そのものを作ってしまうなど、その技術力は高く評価されている。
「自社製品を2年に1機種のペースで開発し続けているのは当社だけ」と語るように、現在ではCADシステム、サンプルカット機、レーザー加工機、ウォータージェット加工機、ベンディングマシン、商品と抜きカスを自動分離するブランキングシステムなど、十数種類に及ぶ。これらを使って抜型製造とその前後の工程の自動化を手掛けている。今では、菓子や化粧品など日用品のパッケージや紙箱の製造を筆頭に自動車内装品の生地裁断、携帯電話の配線板切り出しにも使われるなど、様々な業界で取り入れられており、抜型業界の国内シェアは台数、金額とも約6割で抜きんでており、トップメーカーとして業界を牽引している。
「また、CADシステムを含む各システムは統一した操作方法で利用できるので、国内のみならずアジアやEU諸国でも高い評価を受けています。また、長年培ってきた技術と設備で、現在では80件余りの特許を取得しています。この点は他社には無い大きな強みですね」と代表は胸を張る。
さらに2011年3月、同社の本社工場屋上に大阪東地区では最大の発電容量となる太陽光発電設備の導入を行う。
代表取締役社長 柳本 忠二さん
高速ブランキングシステム
「全ての仕事を自社で手がけるという基本方針でやってきました」と代表の柳本氏が語るように、自社の内製化比率は95%以上と高い。その範囲はアイデア~フォローまでとし、開発・製造・販売・保守まで自社完結型の企業である。
「今の当社があるのも“三ない主義”を守ってきたからなんです。」と、代表が語る3つの経営理念は、ビジネスの基幹部分として当社を支えている。
その1つ目は“手形を発行しないこと”。過去に「お金でないものをもらって仕事をしてはいけない」と痛感した経験から、現金支払いを守ってきた。規模が小さい時代から大手企業と直接取引できたのも、現金で支払ってきたことが大きな要因だと考えている。
2つ目は“不良在庫をもたないこと”。常に高い精度が求められる中で、柳本代表は「自社製造を基本理念とすることで、必要な量だけ作れ、殆ど在庫をもたないで済むことにも繋がります。お客様のニーズや新製品開発に機敏に対応するには、この部分だけでも身軽でないといけない」と胸を張る。
3つ目は“外注を極力なくすこと”。当社が最初に製図機を作ったノウハウが次のレーザー加工機の開発に生かされたように、社内で作ることで技術が蓄積され、それが次の開発につながっていくのだという。
2009年から操業した本社工場
創業時は大阪府東大阪市で事業を展開してきた同社であったが、業容拡大に伴って平成2年より八尾市に本社機能を移転して以来、同市での操業を続けている。
第1工場から第4工場まで建設を展開するなど生産拠点を増やし、マルチセンターをはじめとする最新鋭の設備を設置し、生産能力と部品精度の向上に力を入れてきた。
平成17年にはものづくりに対する努力が認められ、天皇・皇后両陛下が同社を御訪問され、その翌年には、経済産業省・中小企業庁から表彰を受けるなど、同社の功績は広く認められるようになった。
「設備の大型化や人員増加が進むにつれて、工場の集約による業務効率向上という点で、生産体制の再構築が迫られるようになりました」と語るように、会社が成長するにつれて新工場新設の機運も高まった。
同社では候補地として大阪府堺市など近隣地域も視野に入れてきたが、八尾市では工場集積地があり操業しやすく、ものづくりを標榜する八尾市の、固定資産税の5年間の減免を受けられる制度もあいまって、八尾市内への移転を大きく後押しした。そして平成21年、八尾市若林市に敷地面積1,651㎡、3階建て延べ床面積2,910㎡の念願の新本社工場が完成した。
新工場のメリットは大きい。一時期には7か所に点在した拠点も新工場を中心に効率的に再配置できた他、クリーンルームを有する研究開発室や最新式の設備を設置することで生産量の増加と部品製作の精度向上を可能にした。
また、工場の集約化により、技術者が複数の機械に携われるようになったこと、情報の共有化が進んだことや道路環境が良いことで物流面での効果や、各種団体や取引先からの訪問も多くなり、従業員の高いモチベーションにつながっている。
大型機用の第一工場
平成20年の世界的な金融危機以降、設備投資に慎重な企業が増え、新型機は売りづらい状況にある抜型関連業界であるが、現在では同業界以外の分野にも進出を進めている。
現在、当社における抜型業界向けの売上高は全体の50%を切っており、既に様々な分野にむけた営業展開・研究開発が行われている。近時では、抜き型に使うレーザー加工機を改良し、屋外広告分野をターゲットにした新市場の開拓に着手しており、展示会にも積極的に参加している。
また産学官連携にも力を入れている。レーザー加工の分野では、大阪大学や近畿大学、レーザー技術総合研究所や大阪府立産業技術総合研究所と連携し、経済産業省の地域新生コンソーシアム研究開発の委託を受け、次世代レーザーと言われる「超短パルスレーザー」の研究で良い成果を得ている。今後も加工ノウハウを蓄積して将来のものづくりにつなげていく計画である。また、人材育成にも力を入れている。代表が人材育成に熱心なのには理由がある。「あと数年で後進に経営を譲ろうと考えています。」近い将来の世代交代をにらんだ組織作りのために、若手社員を積極的に採用し育てているのである。
良い製品は良い設備があってこそ生まれ、よい設備はよい人材があってこそ生み出されるもの。そう考えてみると人材育成の大切さに改めて気づかされた。
「『新しい考えで新しいことにチャレンジする』を合言葉に、これからも次世代に繋がるものづくりに取り組んでいきたい」と最後に語る代表の目はなんとも頼もしかった。