八尾市ものづくりnet.八尾を拠点に頑張るものづくり企業新日本鋼機株式会社
取材日:2010年1月13日
昭和42年に大阪府八尾市竹渕にて、耐火・防犯金庫の板金溶接を目的に創業して以来、今年で44年目を迎える。
創業時より結びつきがあった日本金銭機械株式会社の家庭用小型金庫、金融機関用大型金庫など耐火金庫の溶接・組立を主力に事業を展開、着実に業績を拡大してきた当社であるが、昭和60年頃より主要取引先が生産拠点を海外にシフトしたため、受注量が大幅に低下することとなった。代表の今村雄二氏は、「会社の存続に関わる大きな出来事だった」と当時を振り返る。
大きな転換期を迎えた同社は、これまでの溶接技術を活かしながら昭和62年6月に板金加工設備へと業務を拡張、板金加工業へ大きく舵を切った。その後、積極的な設備拡充を図ると共に、過去の経験から経営の安定化に向けて一つの業界に固執せず、鉄道車輛、大型ショベルカー・コンボなど建設機械、住宅建材、重電、弱電、発電所・変電所制御盤と様々な業界の板金加工を安定した品質で各メーカーへ供給する総合板金工場へと成長を果たした。
代表取締役社長 今村 雄二さん
「1.5kwYAGレーザー溶接機」
「ACサーボパンチングマシンFO-3610NT-PDC+ASR」
近年、メーカーの製品は品種やモデルチェンジ等、試作から量産までをスピーディーな対応を求められている。今村代表は「弊社では豊富な材料在庫でメーカー様のどんな要求にもお応えすることができます」と大きな自信を覗かせる。また、この20年間は設備導入の為に働いていたようなものです」と語るように、当社では20年以上をかけて最新鋭の設備導入を進め、短納期で超精度を可能とする生産体制を構築し、さまざまな業界へ積極的に参入している。
特に、超速・超精度のレーザー加工機などの大型・最新鋭設備導入は珍しく、リアルタイム、フルレンジ、ファインカットで夜間も無人化での24時間連続加工を実現、AutoCAD導入によってインターネット・メールで図面データの受け渡しを可能とするなど他社を圧倒する短納期を実現した。
また、住宅建材や建設機械の大型部品製作に対応して4メートルのシャーリング切断とベンダー曲加工設備を備え、液晶関係部品の溶接には、ロボット式によるYAGレーザー溶接機を導入するなどあらゆる分野へ貢献できるようになった。その為、大ロット、多品種、大型製品、特殊製品の取り組みを強化出来たことで、当社に対する様々なニーズを外注利用なく内製化で対応、ユーザーからの受注を大きく増加させた。今村代表も「同業他社からの加工依頼も多くなるなど、知名度の向上にも繋がりました」と語る。
建設機械や変電所等の電力関係の需要拡大に伴い、平成20年に現在の本社工場に隣接して八尾市弓削町南に約400坪の2階建て工場を完成させた。
八尾市近隣のほか、得意先が集まる神戸市内などいくつかの候補地があったが、今村代表が「工業集積地である八尾は魅力」と語るように、八尾市内の太田新町を含め溶接・塗装やメッキ工場など二次加工の協力工場も近く、各分野の技術を結集した製品を八尾から各地に供給でき、横のネットワークという点でもメリットのある八尾市内での候補地取得を目指すことになった。
その際、本社工場に隣接した370坪の土地が八尾市役所からの奨励金を生かせて取得出来るタイミングが重なったこともあり、同地に第2工場を新設した。
大きなスペースを確保した第2工場には豊富な在庫を有し、続いて平成21年に材料自動供給の3軸リニア駆動式の大型レーザー加工機(LC-F1-NT、ASF)を導入、1500mm×3100mmの板材を4KWの出力で高速切断を可能にした。24時間稼働で一度に4000Kgもの材料を加工出来る。続いて平成22年に材料自動供給の電動サーボタレットパンチプレス(FO3610NT ASR)を導入、こちらも一度に4000Kgもの材料をセット出来、金型もロボットによる自動交換(PCD)して長時間稼働を可能にしている。これによりコストダウンとリードタイムの大幅短縮が実現した。
第2工場の新設によって、大きな作業スペースを確保することが出来たことで、これまで手付かずであった整理整頓に着手、作業時間の効率化が徐々に進んでいる。また、大型設備の導入を可能とした第2工場新設によって、3S活動を始め、生産活動の合理化・生産性の向上を目指すとともに、近い将来ISO取得を視野に入れ、「きれいな工場」づくりに社員一丸となって取り組んでいる。当社に見学に来る取引先などが増え、従業員の意識も高まり、コスト面・物流面のメリット以上の効果が出てきている。
「3軸リニア駆動レーザーマシンLC-F1 3015NT+ASF」
「ACサーボパンチングマシンFO-3610NT-PDC+ASR」
「220セットのパンチング金型を全自動脱着できるPDC装置」
「今後も“ものづくりのまち”を掲げる八尾市と共に、地域に根付いた企業発信と地域環境との調和を図りながら『ものづくり』に挑戦していきたいですね」と今村代表は語る。
当社では今後も一つの業種にとらわれることなく、アンテナを大きく張って様々な製品に取り組んでいきたいとしている。また、将来的には第2工場を起点に加工業務だけでなく、塗装業務など完成品に仕上げる工程に着手することも視野に入れている。
社内体制としては、従業員に対しても、能力を最大限に発揮出来る環境を提供することは勿論のこと、加工部門の育成だけでなく、今後は営業部門の強化を図っていきたいとしている。特に営業部門では専門の人員を配置し、大手企業を中心に受注の拡大を目指している。
今村代表は最後に、「これからも短納期・高品質な商品を提供し続け、『ここに言えば何とかしてくれる』という会社であり続けたい、さまざまな業種・各分野で『新日本鋼機ここにあり』と言われる存在になりたい」と力強く語った。