八尾市ものづくりnet.八尾のトップシェア/オンリーワン企業株式会社ニシムラ
見えないところで扉の開閉をスムーズにしている小さな金具、丁番(蝶番、ちょうつがい)。
株式会社ニシムラは、1935年、まだ日本の住宅のほとんどが引き戸だった時代に、いずれ日本でもドアが普及することを見据え丁番の製造を開始し、丁番専業メーカーとして70年以上続いている。住宅用ドア用丁番の製造で国内シェア6割以上を誇っており、身近な家のドアを見てみれば、かなりの確率で同社の丁番に出会えるはずである。
同社が高いシェアを維持しているのは、顧客ニーズをいち早く掴み、その実現を可能とする高い製品開発力にある。特に、製品そのものだけでなく生産設備も自社開発するなど、独自の製造技術と社内一貫生産体制を構築することで、現在約3,000種類のモデルを生産している。
丁番の形を形成する金属プレス加工技術として、ステンレス、鋼板を材料に丁番の左右の羽根部分を同時に打ち抜く「順送式」において、効率よく厚みや高さを変える加工方法を実現。また丁番の芯棒を通す「管巻き部分(軸受け部)」の加工専用自動機も自社開発し、日本で初めて高い精度と耐久性を備えた丁番の大量生産を実現し、低コスト化にも成功した。
従来、丁番のドアへの取り付けは、建付けのため微妙な調整をプロの職人が行う必要があり、時間もかなりかかっていた(60分程)。同社は、この常識を覆し、誰でも簡単に調整できる「3次元調整丁番」を開発。扉の位置を三方向(左右・上下・前後方向)に微調整することを可能にし、取り付け時間も従来の1/3(20分)程にまで短縮。それまで職人の技が必要だったドアの取り付けと調整を、ドライバー1本で誰にでも可能にし、業界に革命をおこした。この機能は、住宅設備メーカーが建築資材を工場で製造する際に、予めドアに丁番を取り付けて出荷することも可能にし、住宅部材製造の工業化に大きく貢献した。
一般的な丁番は、扉を閉めた状態でも「回転芯棒」の部分は外から見える。これに対し隠し丁番は、扉を閉めると丁番が隠れて全く見えない構造となっており、美観に優れた「デザイン性」を実現できる。隠し丁番自体は、以前から存在しているものの、部品サイズの大きさ、コストの高さ、耐久性の問題があったが、同社は独自の精密プレス金型の開発により、小型軽量化とコストダウン、耐久性を高めた隠し丁番を実現し、2011年超モノづくり部品大賞の生活関連部門賞を受賞するなど高い評価を受けている。
同社は、2009年度、「KANSAIモノ作り元気企業100社」、「元気なモノ作り中小企業300社」に選ばれるなど、ものづくりにおいて全国的にも高い評価を受けている。そして、それは社員一人一人のものづくりに対する高い意識が支えている。今後も、人と人とを結び、明日へとつなぐかけ橋(アーチ)となるために、建築金物を通して社会に貢献を続けていく。