八尾市ものづくりnet.八尾のトップシェア/オンリーワン企業シルバー株式会社
日本には四季の移り変わりがあり、それぞれの季節で快適に過ごすために当時の技術者は様々な器具を開発してきた。冬場においては、古くは炭火を入れた火鉢や囲炉裏などから暖を取っていた。
明治に入ると海外からストーブが導入され、暖房器具の選択肢は徐々に増え始める。この頃の燃料は石炭や薪が主で、昭和に移ると石油(灯油)を燃料とするストーブが登場する。国内でも多くのメーカーが石油ストーブを生産し、戦後には広く一般家庭に普及し、暖房器具の主役は石油ストーブに移り変わった。石油ストーブは毛細管現象で吸い上げられた灯油を芯の先端で燃焼させる構造であり、この「芯」を製作し、日本国内トップシェアを誇っているのがシルバー株式会社である。
当時の石油ストーブは、芯が綿製であったため灯油が燃え尽きるたびに消耗し、給油の際に芯も取り替えなくてはならず、非常に手間がかかっていた。同社は、この従来の綿芯のウイークポイントに着目し、昭和28年に燃えやすい綿芯をガラス繊維にするという画期的な方法で解消した。
昭和33年には、燃焼部に吸い上げ性能を向上させたガラス繊維を使用し、吸い上げ部には綿繊維を使用したガラス繊維と綿布の継ぎ芯の開発に成功。昭和34年にコンロに採用されると、ガラス芯は一気に普及した。
需要が増大するなか、吸い上げ部に使用する綿織物の調達は困難を極めたことから、不織布を吸い上げ部として使用することに着目し、研究を重ねた結果、綿織物をはるかにしのぐ性能をもつ新しい吸い上げ部用不織布を開発し、業界に先駆けて製品化に成功した。
同社の開発した石油ストーブ芯は、その品質の高さから国内主要メーカーに採用され、石油ストーブ灯芯ではトップシェアを誇っている。
昭和53年頃から灯芯を使用したポータブル石油ストーブの代替として、温風の出る石油ファンヒーターが売り出されたことを受けて、昭和55年には特許製法により流量のバラツキを抑える高精度電磁ポンプを開発した。プロジェクトチームを組んで4年がかりで製品化にこぎつけた。
同社は、お客さまがどういったことで困っているのか、どんな商品を求めているのかといったニーズを聞きながら、自社でできることを模索し、提供していく営業スタイルを大事にしている。思い込みや頭で考えるのではなく、足で動くことを社員には日々伝えている。その結果、石油ファンヒーターという従来からの用途の枠にとらわれず、能動的な営業活動が実り、大手家電メーカーにウォーターオーブンの給水ポンプが採用されたほか、大手衛生・住設メーカーにトイレ用のお尻洗浄ノズルにも脈動ポンプとして採用されるに至る。
また、切削や成型から組立、流量測定まで、すべての工程を自社工場内で行える一貫した生産体制を整備しており、効率的に高品質な製品を供給できるのも強みとなっている。
日本の住宅事情の変化やエアコン、床暖房など新たな暖房器具の普及などにより石油ストーブの需要は年々縮小しているが、電力不足が顕著となった東日本大震災以降では、停電時でも使用ができる石油ストーブの存在が改めて見直されている。
しかし、石油ストーブの需要拡大が厳しい状況下でも、状況に左右されない商品を確立するため、電磁ポンプで培った技術を駆使し、用途拡大や冷却水の循環等、水の搬送に利用される圧電ポンプの開発等に注力している。石油ストーブ用の芯からスタートし、石油ファンヒーター用電磁ポンプ、ウォーターオーブンの給水ポンプやトイレ用の脈動ポンプなど、時代とお客様のニーズにあった製品開発とさらなる事業展開を行っていく。