八尾市ものづくりnet.八尾のトップシェア/オンリーワン企業山本化成株式会社
理科の実験でなじみのある過酸化水素(化学式 H2O2)。3%に薄めた水溶液(オキシドール)は消毒液として用いられるなど、過酸化水素は殺菌・漂白作用を有しており、パルプ漂白や廃水処理、半導体の洗浄など、工場用の殺菌剤・漂白剤として重宝されている。
塩素系の漂白剤が多量の廃棄物を生じるのに対し、過酸化水素は最終的には無害な水と酸素に分解するため、工業利用するには環境にやさしい物質であると言われ、近年過酸化水素の利用は拡大してきている。特に、中国、韓国、ヨーロッパなど海外でプラントが新設される際には、過酸化水素を供給する装置が併設されるケースが増えている。
山本化成株式会社は、過酸化水素製造に用いられる触媒の中でも精度の高いアルキルアントラキノン(AAQ)化合物の製造・外販を手掛けている世界唯一のメーカーである。同社の大牟田工場に高度に自動化された生産設備を有しており、世界各国に安定供給を行っている。同社独自の技術で改良したAAQは、極めて高純度、高品質グレードの化合物として、国内外で高い評価を得ている。
同社は1925年の創業以来、90年以上の業歴を有する機能性色素の開発・製造会社である。古くは有機顔料の国産化に始まり、世界初の単一化合物による黒発色を可能にした情報記録色素「OneDye Black」の工業化など、常に時代のニーズを捉えた数々の付加価値製品を市場に送り出してきた実績がある。
創業以来、蓄積してきた有機合成技術が評価され、得意先から過酸化水素製造用触媒の開発依頼があり、1966年にエチルアントラキノン(EAQ)の開発に成功し製造を開始した。その後、研究を重ね1977年にはEAQの精度をより高めたアルキルアントラキノン(AAQ)の開発に成功し、40年に渡りAAQを供給してきた。
AAQはEAQに比べて高価なものの、過酸化水素製造において不純物が出ず、収率が高いことが特徴となっており、高品質が求められるケースにはAAQが特に重宝される。EAQの製造・販売を行っているメーカーは中国や韓国にもあるものの、AAQはEAQに比べて製造の難易度が高く、AAQを製造できるメーカーは世界でも限られている。またニッチな市場でもあるため、AAQの製造・外販を行うことができる設備や技術水準を有するのは同社のみとなっている。
近年では中国での原材料価格および人件費の上昇によりEAQの価格が上昇傾向にあり、EAQより高価ながらより品質の高いAAQを製造する同社にとっては価格競争力が高まっている。AAQの製造方法・ノウハウを次世代の製造担当者・開発担当者に伝承していくとともに、生産効率を高めるなど研究開発も進めながら、供給体制の維持・発展を図っていく。
また、ニーズの翻訳力、分子設計力および有機合成技術を基盤とした独自の開発マインドは同社の強みとなっており、記録材料分野、表示材料分野、環境・エネルギー分野など益々応用分野が広がる「機能性色素」のパイオニアとして、時代のニーズを先取りした高付加価値製品の研究開発に邁進し、新たな事業展開への挑戦を続けていく。