八尾市ものづくりnet.八尾のトップシェア/オンリーワン企業アベル株式会社
ステンレスは「錆びにくく丈夫で美しい」といわれるが、その理由は、鉄にクロムを添加すると、クロムが酸素と結合して表面に薄い保護皮膜(不動態皮膜)が形成され、腐食を防ぐからだ。
アベル株式会社は、この極薄皮膜をコントロールすることで、難しいと言われていたステンレスへの着色に成功し、「電解発色」という技術を確立した。その後同社は、黒色に特化することで、意匠性と機能性を兼ね備えた「アベルブラック」を開発し、さまざまな分野で使用されている。
アベル株式会社が電解発色法の開発を始めたきっかけは、アルミサッシのカラー化に伴い、ステンレス製の周辺金物などへの同系発色が求められるようになったからだ。しかし、従来の化学発色法では、感覚で色を制御するため品質が安定しなかった。そこで同社は、独自の技術開発に取り組み、ステンレス鋼の電解発色というオンリーワン技術の開発に成功した。
同社の電解発色は、塗装とは違うのではがれる心配もなく、化学発色法による光沢感や耐候性はそのままに、課題であった色の均一性・再現性を格段に向上させており、建材業界など市場からも高い評価を得ている。
電解発色技術の開発に成功した同社は、戦略的に「黒」にこだわった。黒は流行に左右されない色であり、また、電解発色において黒色は他の色に比べて安定性が高く高級感のある色を出せる、光の反射を防止するといった特徴もある。
このように、意匠性と機能性を兼ね備えた「アベルブラック」は、高級感を大切にしているブランド店の内装や電化製品の外装、寸法精度が求められる精密機器部品など幅広い分野で活躍している。2012年5月に開業した東京スカイツリーのエレベーターの内装でもアベルブラックが採用され、今後もさまざまな場所で同社の技術を目にすることが出来るだろう。
同社は、連続的な電解発色処理により黒色ステンレス鋼をコイル材化した材料の生産・販売に取り組んでいる。顧客から提供された成型後の部品に電解発色処理を行うのではなく、ステンレス鋼に「アベルブラック」加工を施したコイル材を提供することで、ステンレス鋼材に付加価値をつけて提供することができ、国内外のさまざまな分野への販路拡大を狙う。
同社は今後も、顧客との距離を近づけ「提案」していくことで、時代の求めるニーズにうまく合った技術・製品の開発を目指していく。