八尾市ものづくりnet.八尾のトップシェア/オンリーワン企業アイセル株式会社
「ミキサー」というと一般的にはジューサーやフードプロセッサーなどの調理器具がイメージされる。しかし、実際には医療分野における薬品の混合、化学工業における溶剤の混合、食品加工分野における素材の混合、バイオ産業における微生物の混合など、様々な業種・用途で用いられている。
アイセル株式会社が開発した「エレメント積層型ミキサー(MSE:Mixer with Stacked Elements)」は今までにない新たな構造で液体・気体の混合を実現したミキサー(混合技術)だ。
MSEは2種類の「混合エレメント」と呼ばれる蜘蛛の巣状の円盤が交互に重なる構造となっている。
複数枚の「混合エレメント」が重なり合うことで構築される多数の小さな通路を液体や気体が分割・合流を繰り返しながら通過することで混合される仕組みとなっている。また、MSEはその構造から応用分野が広く、静的混合にも動的混合にも適用可能である。
スタティックミキサーとは、モーターで攪拌翼を回転させるのではなく、配管などの中に設置し、その配管に気体や液体を流し込み、ミキサーを通過する過程で混合を行うものである。MSEはスタティックミキサーとして使用でき、その構造も「混合エレメント」を重ねて両端の板で挟みこむ形となり、従来のスタティックミキサーと比較して、簡易に製作することができることに加え、短い距離での混合が可能となる。
多くの撹拌槽では羽根のついている攪拌翼が用いられるが、MSEは羽根のない攪拌翼としても使用できる。攪拌翼としてのMSEは、通常使用されているディスクタービン翼等と比べて表面積が大きくなるため、攪拌時にモーターから液体に伝わるエネルギーが分散し、マイルドな混合が可能となる。攪拌時の剪断力に弱い微生物の混合などバイオ産業をはじめとした用途が期待される。MSE内部で繰り返し混合されながら攪拌することで、混合時間の大幅な短縮も可能となる。
また、「混合エレメント」は金属だけでなく、プラスチック、テフロン、セラミックス等、多様な材料による製造が可能である。加えて、外径、内径、貫通孔のサイズ等も任意に変更でき、混合物の性質に応じた製作が可能となっている。
アイセル株式会社は機械器具等を製造するメーカー企業だが、どちらかというと化学系の用途に用いられるMSEのような製品の開発は行っていなかった。今まで経験のない新たな分野の製品開発に会社として予算や人員を多く割くことはできないまま開発がスタートした。
限られた予算・人員体制の中で、国や府の助成制度や大学等の研究機関との連携等、外部資源を活用しながら開発を進め、約3年かけて完成にこぎつけた。
従来のミキサーと異なる仕組み・形状の製品であることから、用途は様々なところで考えられ、医療やバイオ産業をはじめとした異なる用途ごとにデータ分析を行っている。
アイセル株式会社の社名は「アイデアをセールする」という意味から生まれた。同社は既存の枠組みにとらわれず、新たなものを創造するという企業理念から様々な新製品・新技術を開発し、国内トップシェアを誇る製品も多数保有している。MSEはそんな同社にとって、また一つの新たな扉を開く製品となることが期待される。