八尾市ものづくりnet.八尾のトップシェア/オンリーワン企業不易糊工業株式会社
かわいい動物の容器に入った「フエキでんぷんのり」。子どものころよく使っていた方も多いのではないだろうか。この「フエキでんぷんのり」を開発、製造している企業が八尾市にある。
不易糊工業は、どうぶつのりの「フエキくん」で知られる糊製品を中心とした文具・事務用品メーカー。「不易糊」は日本初の「腐らない糊」の商品名であり、「糊がすぐ腐る」という主婦の声に応えるために1895年に開発された。その後、糊の防腐効果や安定性維持のために使用していたホルマリンに発ガンの危険性が国内で指摘され、子どもが安心して使える糊を開発したいという思いから、業界を先駆けてノンホルマリンの研究を開始し、安全安心な原料へ変更する等の改良を重ね1981年には研究に17年の歳月をかけたノンホルマリンとうもろこしでんぷん100%の「不易糊」の開発に成功した。JIS規格では元々基準値をクリアしていたのだが、ホルマリンゼロにこだわり、徹底的に安全安心を目指した。 「不易糊」の開発過程のなかで、植物でんぷんの応用化学技術が蓄積されていき、でんぷんのりのほか、固形糊や、書道液、化粧品、幼児保育用の描画材料、建築用シャープペンシル・マーカー等の筆記具等の新商品を投入してきた。
直近では、エコプラスチックの開発に力を入れている。プラスチック業界のエコプラスチック原料といえば植物由来のポリ乳酸が注目を集める中、不易糊の歴史である植物でんぷんそのものを原料に使用した熱可塑性樹脂の研究開発を進めている。
≪① インクジェットプリンタで印刷できるクリアフォルダ≫
従来、クリアフォルダへの印刷は専用の印刷機械が必要であり、企業名やロゴなどをクリアフォルダに印刷する場合は、専門業者に大ロットで委託する方法しかなかった。その不便さに目をつけ、でんぷん糊開発過程で培ったブレンド技術を用いて、家庭用のインクジェットプリンタで印刷できるクリアフォルダの開発に成功した。これにより、中小企業や一般個人でもオリジナルのクリアフォルダを簡単に作成できるようになった。このクリアフォルダは、2014年夏に開催された文具関係の展示会で金賞を受賞するなど、対外的な評価も得ている。
≪② 香りつき(消臭)のエコプラスチック≫
植物でんぷんを用いることによる保香性の特性を活かし、香りや消臭成分を付加できる植物でんぷんを用いた熱可塑性樹脂の開発に成功し(2013年8月特許申請)、まず、3Dプリンター用フィラメントとして2014年秋に生産を開始した。 今後は、プラスチックを1ミクロン単位の線径でカットすることで香り付きの繊維として活用するなど、さまざまな用途が期待できる。
24種の香りが楽しめるリップクリーム
スティックのりの製造技術や香りを付加するノウハウを生かし、「フレッシュピーチ」「カシスカクテル」など24種の香りが楽しめるリップクリームを開発した。気分にあわせて香りを選んでほしいという思いをこめ「リップビュッフェ」という商品名で、2014年10月より販売を開始した。
「主婦のために腐らない糊を作りたい」「子供たちのために安心して使える糊を作りたい」。そんなまごころから商品開発が始まり、粘り強い研究を続け、開発ノウハウが蓄積されていき、新しい価値を創造してきた。植物でんぷんを用いた熱可塑性樹脂の応用化学技術による新製品投入を目指す等、創業130年へ挑戦し続ける不易糊工業。今後の動向に注目したい。