八尾市ものづくりnet.八尾のトップシェア/オンリーワン企業田中紙管株式会社
「紙管」をご存じであろうか?糸、紙、フィルムやシールなどを巻き取る紙製の芯棒のことを「紙管」と言う。紙管の専業メーカーであり、特に繊維用紙管で国内シェア50%を超える企業が八尾市の田中紙管株式会社である。1911年の創業以来、大手合成繊維メーカーや紡績会社、フィルム・印刷業界など取引先は多く幅広い。取引先からの紙管への要求は厳しいが、それらの要望に応えていくことで、顧客からは「技術の田中」との評価を得るに至っている。
紙管に求められるのは、強度と精度である。1分間で6,000メートルという新幹線を超えるスピードの回転で繊維を巻き取ると、巻き取りの機械の鉄板が当たり破裂してしまうことが課題であったが、いく通りもの紙と接着剤の組み合わせを長年研究した結果、求めていた強度を実現した。また、精度という面では、髪の毛よりも細い繊維を巻き取ることもあり、紙管の角に当たると糸が毛羽立って不良品となってしまうという課題を、角をなめらかにするためにプラスチック表面加工を施すことでクリアした。これには田中紙管の長年の苦労と技術があってこそである。こうした技術力こそが、繊維用紙管で国内シェア50%を超えるに至った秘訣だと言える。大手衣料メーカーと大手合繊メーカーが共同開発し、冬場ではお馴染みで大人気となっている「あの繊維」の紙管も田中紙管の製品である。
田中紙管株式会社の強みは、紙管製造機械を自社で開発していることである。昭和の初めには、紙管製造機械の特許も取得し、インドをはじめアジア等の海外へと同社の機械を輸出している。創業時は材料手配から作り方まで試行錯誤の連続で、まったくの手探りでの紙管づくりであった。しかしながら、創業当時から顧客のニーズに応えるための創意工夫を重ねることに力を入れてきたことで現在の田中紙管がある。
紙管の溝を切り込むための刃は、外注せずに自社で改良した刃物加工専用のNC工作機で作っている。刃の材質や形状、切り口の深さは、巻き取る繊維の太さや厚さ、特性などにより使い分けている。巻き取りの技術だけでなく、機械や切り込みの刃においても同社の技術やこだわりがみえる。
巻き取りの技術は繊細であり、強さを要求されたり、巻き取るスピードが高速のため精度を要求されたりとお客様の要望は多岐に渡る。紙や糸だけに捉われず、多様なものを巻き取るためにお客様のニーズに応えていくことが大切である。
たとえば、炭素繊維を巻き取るためにインサイドプル型と呼ばれる構造を採用し、国内特許を取得した。インサイドプル型とは、紙管にミシン目の切れ込みが斜めに入っており、紙管をバラバラにして内側から取り除くことができる。とくに繊度の大きい炭素繊維を、使用時にトラブルを生じさせることのない状態で巻き取るために開発された。飛行機・ロケットなどの航空・宇宙産業や船舶・車両に加えて土木関連等幅広い分野で最先端素材として活躍の場が広がる炭素繊維の活用に大きく貢献している。田中紙管の技術により今後さらなる市場の拡大が期待できる。