八尾市ものづくりnet.八尾のトップシェア/オンリーワン企業株式会社永和マテックス
発泡スチロールはよく燃える、溶けてしまう、ということは我々の常識であ
る。この常識を覆す会社が株式会社永和マテックスである。
発泡スチロールは軽く、断熱性があり、吸水性も低く、また適度の透湿性があり、その上異形成形が出来て価格が安い、という特徴を持っている。しか
し、非常に燃えやすいという大きな弱点をも併せ持っている。
安全・安心という観点から、業界の半永久的なテーマは「プラスチック及び発泡スチロールの不燃化」である。従来の不燃化技術は、ポリマーに難燃剤を取り込む方法で解決を図っていたが、その方法では限界があった。そのような状況の中で、同社は解決策を探求し、燃えない(燃えにくい)発泡スチロール:『カルック』の製品化に成功した。発泡スチロールビーズの一粒一粒に特殊コーティングを施し、そのコーティングビーズを成形加工することにより、プラスチック材料燃焼性試験で最も高い難燃性のグレードをクリアした。接炎時における発煙はほとんどなく、型崩れも起こさず、有毒ガスの発生もない。加工についても、発泡スチロールの成形に一般的に用いられる成型加工機でいろいろな形状の物を成形することができる。
その特徴に注目し、採用したのが東京消防庁である。大規模な火災時の消火活動では、高温によって消防隊員のヘルメットの内側の発泡スチロ-ルが溶けて隊員の頭に張り付いてしまい、消火・救助作業に支障がでるだけでなく、隊員の命を危険にさらしてしまうこともあり、安全面での対応が問題化していた。通常の発泡スチロールは炎を近づけると数秒で燃えて溶けてしまうが、永和マテックスの『カルック』は、表面は焦げるが8分以上炎にさらしても溶けないことが実証されている。東京消防庁では、過去に耐熱性の高い海外製品を試したが、重くて不採用となった経緯があった。同社と大手のヘルメットメーカーが共同開発した、カルックを使用した軽くて燃えないヘルメットは市場ニーズにマッチし、東京消防庁をはじめ、全国の消防本部のうち4ヶ所で採用されることとなったのである。
同社の植田社長は銀行員時代にいろいろな会社に出会い、その時から特に製造業、ものづくりに興味があったが、カルックの難燃性の基となる特許技術と出会ったことをきっかけに、同社の前身となる会社を設立することとなる。協力会社から支援を得て、実用化の研究にかかるが、開発は難航した。粘り強く研究を続けたことや、研究に対する理解者の支援もあって製品化に至ったもの
の、製品化当時、時代にマッチせず、すぐに売れた訳ではなかった。前述の4ヶ所の消防本部への採用の件で、ようやくその技術に光が当たったものである。今後は、全国の消防本部への採用拡大を見込んでいる。
開発時代を周囲に支えられた経験や、社長が八尾市で生まれ育ったこともあって、同社は八尾市から世界への技術発信を目指す。
世界トップレベルの安全性を求める消防本部で採用されたヘルメットは、今後は国内だけでなく、世界での採用が期待され、大手のヘルメットメーカーによって世界の自動車・バイクレース業界にも紹介されることで、拡がりを見せている。また、建築分野でも建築基準法の改正に伴い、軽量・難燃で湿気に強い天井材の需要が高まっており、今後、様々な分野で同社製品の応用が期待されている。